マンション耐震化コラム

最終更新日:令和4(2022)年01月17日

■マンション耐震化コラム

東日本大震災を耐えられたから、うちのマンションは大丈夫ってホント?

 「今住んでいるマンション…耐震面に不安はあるけど、東日本大震災の揺れでも耐えられたし、大丈夫だよね」そんな風に考えていらっしゃる方はいませんか?
 結論から申し上げると、東日本大震災を耐えられたマンションが必ずしも次の大地震に耐えられるとは限りません!
なぜこのような結論となるのか、以下の観点から見ていきましょう。

震度7クラスの大地震が来る?

 東日本の広範囲に甚大な被害をもたらした東日本大震災、その原因となった「平成23年(2011年)東北地方太平洋地震」での本震(3月11日14:46発生、震源三陸沖)はマグニチュード(M)9.0で日本の地震観測史上最大の地震でした。また短い時間差で余震が断続的に誘発され、これらの震源は岩手県沖から茨城県沖までの広範囲に及びました。(図1:気象庁ホームページより)
 各地の震度は宮城県栗原市で震度7を記録、宮城県、福島県、茨城県、栃木県で震度6強を観測しました。東京都では千代田区、墨田区、江東区、中野区、杉並区、荒川区、板橋区、足立区、江戸川区、調布市、町田市、新島村(式根島)で震度5強を観測し、多くの地点で震度5弱を観測しました。
 そして、今後来ると想定されている首都直下地震では、最大予想震度は震度7と言われています。

マグニチュードと震度

 ここに、「マグニチュード(M)」と「震度」という地震に関する用語があります。「マグニチュード」は発生源の地震そのものの規模を示します。Mの値が1大きくなるとエネルギーは約32倍に、Mの値が2大きくなるとエネルギーは約1000倍になるという関係があります。M9の地震はM8の地震約32個、M7の地震約1000個分のエネルギーに相当します。
 一方、「震度」は各観測地点での揺れの大きさを表します。以前は震度0(無感)から震度Ⅶ(激震)の8段階で人間による総合判断によるものでしたが、兵庫県南部地震(1995年度)後の1996年からは計器による自動決定となりました。従来の8段階から、震度5弱、震度5強、震度6弱、震度6強が生まれ10段階になり、観測地点の加速度波形の振幅の大きさ、周期成分等から自動的に計測震度として示されます。図2は震度と加速度の関係を示したものです。計測震度が1増加すると加速度は3.16倍、計測震度が2増加すると加速度の大きさは10倍になります。(図2:気象庁ホームページより)

東日本で体験した3倍の地震力?!

 地震時の地盤の揺れは建物に地震力として作用します。この地震力の大きさに対して、建物が抵抗できる能力(耐力)が小さい場合に建物に被害が生じます。地震時に受ける加速度の大きさに建物重量を乗じたものが建物に作用する地震力になりますので、建物の被害は加速度の大きさ、すなわち震度に大きく関係します。
 ここで、震度6強(計測震度にて6.0以上、6.5未満)と震度5強(計測震度にて5.0以上、5.5未満)の場合の地震力の比較をしてみたいと思います。仮に地震波の性質が同じ(周期成分等)とすれば計測震度が5.0の場合の加速度は、計測震度6.0の場合の加速度の1/3.16、すなわち建物に作用する地震力は1/3程度です。すなわち、東日本大震災に震度5強(計測震度5.0)を体験した建物が震度6強(計測震度6.0)に耐えるには、体験した地震力の約3倍の地震力に耐えることが求められます。震度5強で大丈夫だったからと言って、安心することはできません。

次来る大地震に耐えられるか確認を!

 お住まいのマンションがこの地震力に耐えられるか確認するには、決められた方法で耐震診断を行うことが必要です。耐震診断では、建物に必要な耐力があるか否かを判断できます 。

 いつ来てもおかしくない大地震に備え、まずは耐震診断を実施して、マンションの状況を確認しましょう!

図1 平成23年(2011年)東北地方太平洋地震での本震と余震(気象庁ホームページ)
図1 平成23年(2011年)東北地方太平洋地震での本震と余震(気象庁ホームページ)

図2 震度と加速度の関係(気象庁ホームページ)
図2 震度と加速度の関係(気象庁ホームページ)

27年前、阪神淡路大震災 そのとき旧耐震基準のマンションは?

 「今住んでいるマンションが地震で壊れることはありえないよね。もしもの場合は、避難所に行けばいいよね。」そんな風に考えていらっしゃる方はいませんか?
 このコラムでは、27年前の阪神・淡路大震災で旧耐震基準のマンションにどのような被害があったのか、また、いまなぜ在宅避難が勧められているのかについて解説します。
 大地震への備えを考える上で、建物の耐震化がいかに重要であるかがお分かりいただけると思います。

1975年(平成7年)1月17日5時46分、神戸市では

 1月17日のまだ夜も明けやらぬ午前5時46分、神戸市を中心にマグニチュード7.3、最大震度7の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)が発生しました。下からドンと突き上げるような揺れに続いて、激しい横揺れが約10秒間続きました。この地震では、周期1~2秒の比較的長い揺れで、建物に大きな被害をもたらす「キラーパルス」が多くのマンションや木造住宅を倒壊させました。
 マンション2階のある居住者は、窓の外に閃光が走ったかと思ったら、ドーンとものすごい音がして、一瞬宙に浮いたような感覚の後、気を失ってしまったそうです。意識が戻り、物が散乱した部屋から外に出てみて、1階が壊れて潰れていることに初めて気づいたそうです。
 これが典型的な壊れ方の1つです。それ以外にも市内のあちこちで、中間のある階だけが壊れた建物や、足元が壊れて全体が転倒し前面道路をふさいでしまった建物、また溶接部が破断して大きく傾いた鉄骨造の建物など、様々な被害が見られました。
 世界に冠たる厳しい耐震設計をしているはずの阪神高速道路でも1本橋脚の柱脚が壊れて横倒しになり、鉄道の高架、橋梁、トンネル、駅舎なども大きな被害を受けました。さらに、港湾護岸が倒壊し、新交通システムも被災し、湾岸の交通網が寸断され麻痺状態に陥りました。ライフラインでは、水道、電気、ガス、電信・電話のすべての機能が停止し、ポートアイランドでは液状化が発生しました。
 全壊した古い木造住宅からは火災が発生し、木密地域が多い長田区を中心に瞬く間に延焼が拡大し、火災旋風も発生し、長田区全体が焼け野原になりました。結果として死者・行方不明者6,435名、全壊家屋104,906棟、全焼家屋6,148棟の未曽有の大災害となったのでした。
 現在、「首都圏で発生確率が30年以内に70%」として国が注意喚起しているのは、南関東で起きる首都直下地震です。阪神・淡路大震災と同じM7.3を想定しており、被害の様相も同震災と同じであり、都市の規模を考えると阪神・淡路の3~4倍の死者数、全壊棟数になると予測しています。そのため、都民としては被害軽減のためのマンションや戸建住宅の耐震性向上と火災対策が急務です。

旧耐震基準マンションの被害は

 耐震設計基準は1981年(昭和56年)に新しい設計法に改正されました。それ以前の耐震設計基準を旧耐震基準と呼んでいます。旧耐震基準は、震度5クラスの地震に対して構造体に損傷が起きないように設計する考え方で、震度5クラス以上の大きな地震に対しては規定がありませんでした。
図1 阪神・淡路大震災での建物(RC、SRC造)被害状況(出典:東京都・耐震化のすすめ) 図2 阪神・淡路大震災での建物被災状況 1階ピロティが倒壊(出典:神戸市阪神淡路大震災117の記録)  一方、新耐震設計基準では、保有耐力設計法が導入され、建物が使用されている間に一度遭遇するかどうかの震度6強という極めて大きな地震についても、人命を失うような危険な倒壊や崩壊を防ぐ考え方が取り入れました。
 このような規定がない旧耐震基準の建物で耐力や粘りに余裕のない場合、大きな地震に遭遇した際に、倒壊や崩壊に至る大きな損傷を生じてしまいます。実際に、阪神・淡路大震災での建物被害状況からも、旧耐震基準の建物が大破や倒壊に至った比率は新耐震基準の建物を大きく上回っていることが分かります。(図1)
 特に、駐車場などに使用する目的で1階が壁抜けとなるピロティ構造(図2)、建物の平面や立面の形状が不整形、垂れ壁と腰壁に接する短柱、建物間に適切な間隔が保たれていない場合のエキスパンションジョイントなどに被害が多く発生しました。また、周囲の非耐力壁のひび割れによる玄関ドアが開閉不能となる損傷も多く発生しています。
 従って、旧耐震基準の建物は、耐震診断を行って補強が必要かどうかを判断し、必要な場合は適切な耐震補強を行うことが重要です。

避難所生活による大きなストレス

 1995年(平成7年)の阪神・淡路大震災では、最大で1,138か所もの避難所が設置され避難所生活者は30万人超にも達しました。この中には被災したマンションの住民も多く含まれていました。また、2011年(平成23年)の東日本大震災の時には、約2,100か所の避難所に40万人を超える避難者が殺到しました。阪神・淡路大震災や東日本大震災での経験から、災害時の避難所の設置が急速に整備されましたが、その一方で避難所における生活環境の悪さも問題点として挙げられるようになりました。
 そして、2016年(平成28年)に起った熊本地震の際には、地震災害によって直接亡くなる方の人数(50名)より、その後3年間にわたって避難所生活の身体的負担等から亡くなる災害関連死の人数(218名)がはるかに多いことが明らかとなりました。これを契機に、避難所の生活環境の悪さが大きくクローズアップされ、その改善が強く要求されました。同時に、マンション住民に対しては、避難所に行かずにマンション住戸内にとどまる「在宅避難」が勧められるようになりました。
 さらに、2020年(令和2年)初頭から蔓延した新型コロナウイルス感染を受けて、内閣府や各自治体から「感染症を踏まえた避難所の在り方」等が通知され、避難所の収容人数の減少が予想される一方で、在宅避難の重要性がより強調されるようになりました。東京都でも、首都直下地震等の災害に備えるため都内の全家庭配布している防災ブック「東京防災」において「在宅避難」をすすめています。
 マンションの場合、大地震に遭遇しても食料や水の備蓄など地震発生後3日から一週間程度の生活を継続できる備えがあれば、在宅避難することができます。マンションにお住まいの方々には、大地震が起きても避難所に行かない選択、すなわち「在宅避難」することをお勧めします。そのための大前提として、大地震が起きても軽微な損傷にとどまるような耐震性がマンションには必要です。建物が壊れてしまっては継続的な生活はおぼつきません。

次来る大地震に耐えられるか確認しましょう

 耐震診断により十分な耐震性を持っているかを調べ、必要なら耐震補強を行っておくことが、マンションにとっては防災対策および生活を継続するための非常に大切な対策となります。

 今後30年以内の発生確率が70%と推定される「首都直下地震」に備え、まずは耐震診断を実施して、マンションの状況を確認しましょう!

 

問い合わせ先
東京都 住宅政策本部 住宅企画部
マンション課 マンション耐震化担当
03-5320-4944(直通)

 

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